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【拉致再調査】「約束実行 北に促す」 「1年超えず」 政府、家族に説明

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【拉致再調査】「約束実行 北に促す」 「1年超えず」 政府、家族に説明

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日朝政府間協議を受けた説明会に臨む拉致被害者家族ら(右側)と、政府側を代表して挨拶に立つ古屋圭司(けいじ)拉致問題担当相(左端)=2014年5月30日、内閣府(財満朝則撮影)  安倍晋三首相(59)は5月30日午前、北朝鮮が拉致被害者らの全面的な再調査の実施を受け入れたことについて「固く閉ざされていた拉致被害者救出の交渉の扉を開くことができた。北朝鮮が約束を実行するように強く促したい」と述べた。官邸で記者団の質問に答えた。

 これに関連、菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は記者会見で、北朝鮮の特別調査委員会による調査期間に関し「1年を超えることはないだろう」との見通しを示した。

 調査期間は合意文書に盛り込まれなかったが、菅氏は「日朝の交渉で、わが国から『だらだら時間をかけるものではない』と主張し、向こうも『そういうものではない』という話を受けている」と説明した。

 再調査の結果に関しては「日本は、日本なりの情報を持っている。違うことがあれば、当然主張し、対応してもらう」と述べた。

 総連本部は含まれず

 北朝鮮の宋日昊(ソン・イルホ)・朝日国交正常化交渉担当大使(59)が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の売却問題が日朝合意に含まれるとの認識を示したことについては「裁判所で(競売)手続きが行われており、政府は司法に介入すべきではないという立場だ。交渉で何回となく申し上げた」と反論し、今後の協議対象にはならないとの考えを示した。

 一方、古屋圭司(けいじ)拉致問題担当相(61)は30日午後、拉致被害者の再調査で日朝両政府が合意したことを受け、協議の内容について被害者家族に説明した。家族からは、制裁解除の時期や調査の実効性に懸念を示す意見が相次いだ。面会には(5月)26~28日の日朝政府間協議で交渉にあたった外務省の伊原純一アジア大洋州局長も同席した。

 古屋氏は冒頭、北朝鮮の人権侵害を非難し国連調査委員会の報告書などを例に挙げ、「包囲網が強まり北朝鮮は態度を変えざるを得なくなっている。これからの折衝がまさしく胸突き八丁になる。ご家族は長い間、筆舌に尽くし難い苦しい思いをしてこられた。いよいよ解決に向けて動きだした。私たちは全力を挙げて取り組むことを約束する」と述べた。

 実効性どう担保

 家族らによると、日本政府が再調査開始時点で日本独自の経済制裁を解除する方針であることに対し、家族から「北朝鮮の調査の実効性をどう担保して判断するのか」という意見が相次いだという。

 有本恵子さん=拉致当時(23)=の父、明弘さん(85)は「説明を聞いて向こう(北朝鮮)の態度がこれまでとは違うという感じもした」と期待を示したが、「ほごにされる危険があるので、調査内容次第では協議を白紙に戻す覚悟で臨んでほしい」と求めた。

 ≪増元事務局長「制裁解除は検証してから」≫

 日朝両政府で合意した拉致被害者の再調査について、拉致被害者、増元(ますもと)るみ子さん=拉致当時(24)=の弟で、家族会事務局長の照明さん(58)=が5月30日、産経新聞社のインタビューに答えた。

 ――再調査合意の感想は

 「ストックホルムの日朝協議直後は合意に至らなかったという話で、『またか』と思ったが、(翌日に合意して)『そこまでいったか』と歓迎している」

 ――懸念材料は

 「(北朝鮮が設置する)特別調査委員会の調査対象に、ある程度墓参が進んでいる日本人遺骨の問題がなぜ入っているのか。(調査)引き延ばしの口実として使われたり、遺骨問題の進展を理由に制裁解除を迫られたりする恐れがある。誰が委員会に入って誰が権限を持ってやるのかも慎重に見極める必要がある」

 ――日本政府は再調査開始時点で、日本独自の制裁を一部解除する方針だが

 「調査するという言葉だけで解除するというわけにはいかない。北朝鮮がどういう行動を取ったのか検証しないと、(日本が)行動するのは駄目だろう」

 ――特定失踪者らも再調査の対象となる

 「これまでも北朝鮮が特定失踪者を何人か返すという噂が流れた。北朝鮮が一部の特定失踪者を返しただけで、全面解決といって日本に制裁解除を迫るのではないかと心配している。ただ、事情に詳しい安倍首相なので下手なことはしないと信頼している」

 ――被害者家族の高齢化が進んでいるが

 「一日でも早くやらないと、今度は誰が倒れるか分からない。救出活動に立っている家族も弱っている。その意味で非常に焦りはある」

 ――政府には今後何を求めたいか

 「スピード感をもって北朝鮮との交渉にあたっていただきたいと思っている。1年も2年も同じ状況が続くとたまらない。今年中には拉致被害者何人かの帰国を実現し、全面解決への道筋をつけてもらいたい」(SANKEI EXPRESS

 ■増元るみ子さん拉致事件 増元さんは1978年8月12日、交際中の市川修一さん=拉致当時(23)=と一緒に「夕日を見に行く」と鹿児島県日置(ひおき)市の吹上浜に出かけ、行方不明になった。その後、2人が北朝鮮工作員に拉致された疑いが強まり、警察当局は拉致事件と断定して捜査を進めている。2002年9月17日の日朝首脳会談で北朝鮮は2人の拉致を認めたが、「死亡」と説明。ただ、北朝鮮の説明内容や「証拠」とされる書類に不自然な点が多く、日本政府は他の拉致被害者とともに即時帰国を求めている。

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