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横田夫妻 めぐみさん娘と初面会 モンゴルで10~14日

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横田夫妻 めぐみさん娘と初面会 モンゴルで10~14日

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キム・ヘギョンさんの写真を公開した横田めぐみさんの父、滋さんと母、早紀江さん。12年後に初めての面会を果たした=2002年10月24日、東京都千代田区(大山文兄撮影)  ≪全員救出のため今後も戦う≫

 北朝鮮に拉致された横田めぐみさん=拉致当時(13)=の父、滋さん(81)と母、早紀江さん(78)が3月10~14日、めぐみさんの娘のキム・ヘギョン(ウンギョン)さん(26)とモンゴルの首都ウランバートルで初めて面会した。外務省が16日に発表した。

 政府関係者によると、面会には日朝両国の政府関係者も同行した。北朝鮮側は面会で「めぐみさんは亡くなった」と従来の主張を繰り返したという。別の関係者によると、めぐみさんの夫で韓国人拉致被害者の金英男(キム・ヨンナム)氏は出席しなかったとされる。

 横田さん夫妻は16日、文書で「対面は、本当に奇跡的なことで、大きな喜びです。一つのことをきっかけに、全被害者救出のためになることを切望しています」などと心境をつづったコメントを出した。

 今回の面会は、(3月)3日の中国・瀋陽での日朝赤十字会談に伴う非公式の政府間協議で、夫妻が高齢になったことなどを理由に日本側が提案し、合意した。

 孫の言葉に心揺れる

 横田さん夫妻とヘギョンさんとの面会案はこれまでにも浮上した。しかし、夫妻が面会のために訪朝することが、北朝鮮に拉致問題の幕引きに利用される恐れがあるとの反対論が強く、実現していなかった。

 ヘギョンさんの存在が明らかになったのは日朝首脳会談が行われた2002年9月。横田さん夫妻は心から喜び、ヘギョンさんの訪日が実現した際には東京ディズニーランドや京都を案内したいと夢見ていた。

 だが、02年10月、平壌で日本の報道機関のインタビューに応じたヘギョンさんは父、金英男氏からめぐみさんが「死亡した」と聞いたと話し、横田さん夫妻にこう呼びかけた。「私はなにもいりません。おじいさん、おばあさんが来てくれるだけでありがたいのです」。2人を訪朝させ、「めぐみさん死亡」を既成事実化しようとする北朝鮮の狙いが透けてみえた。

 ヘギョンさんの言葉に夫妻の心は揺れた。滋さんは訪朝を希望したが、早紀江さんは北朝鮮を利することになると反対。ほかの被害者家族も同様の懸念を口にした。滋さんは「反対を押し切って行くわけにはいかない」と思いとどまった。

 「めぐみ生存を確信」

 孫に会いたいという当たり前の感情すら押し込めなければならなかった横田さん夫妻。2人の気持ちをもてあそぶように、その後もヘギョンさんを利用した接触は続いた。「訪朝しないか。ヘギョンさんに会わせる」。数年前にも、ある政治家から支援者にそんな誘いの声がかけられたことがあった。

 北朝鮮に利用される恐れのある訪朝を避けつつ、横田さん夫妻はヘギョンさんのことを気にかけ続けた。ヘギョンさんが結婚したという情報が流れた11年、滋さんは「結婚の記念写真を見たいですね」、早紀江さんは「そういう年頃になったのかと感慨深いものがあります」と語っていた。

 ようやくヘギョンさんとの面会はかなったが、めぐみさんら拉致被害者は今も帰国を果たせないままだ。

 「私たちは初めからすべての被害者救出のことしか考えておりません。今回の面会もそのために行きました。面会後もめぐみの生存への確信はまったく揺らいでいません。今後も全員救出のため戦いを続けます」

 早紀江さんは16日、支援組織「救う会」の西岡力会長にこう話したという。孫に会えた喜びをかみしめつつ、夫妻は今後も拉致問題解決に取り組む。

 ≪対中戦略の一環か≫

 李英和(リ・ヨンファ)・関西大教授(59)の話「北朝鮮としては、関係が悪化した中国に石油や食糧の輸出を早く再開してもらうため『だったら日本と仲良くするよ』という挑発姿勢を見せる戦略の一つで、残念ながら拉致問題を全面解決する決断までしたものではないだろう。めぐみさん問題の進展につながる話題までは出ていないのではないか。ただ、1年以上途絶えている政府間正式協議が再開されれば、拉致解決の糸口となる。日本政府は今回の面会は外交駆け引きの結果だと理解しつつ、このチャンスを生かしてほしい」(SANKEI EXPRESS

 ■横田めぐみさん拉致事件 1977年11月15日、中学1年生だった横田めぐみさんが下校途中、新潟市内の自宅近くで消息を絶った。北朝鮮側は2002年の日朝首脳会談で拉致を認め、めぐみさんは既に死亡したと説明。04年11月にめぐみさんの「遺骨」を提出したが、日本側はDNA鑑定を経て別人のものと発表し、北朝鮮側の説明に矛盾があるとして、生存を前提に再調査を求めている。

 娘のキム・ヘギョン(ウンギョン)さんは、1987年9月13日に北朝鮮で、韓国人拉致被害者の金英男氏との間に生まれた。日本のDNA鑑定でめぐみさんの両親の滋さん、早紀江さんの孫と確定している。

 【横田めぐみさん、キム・ヘギョンさんをめぐる経緯】

1977年11月15日    北朝鮮がめぐみさんを拉致

1986年8月13日     めぐみさんが金英男氏と結婚

1987年9月13日     めぐみさんがキム・ヘギョンさんを出産

1997年5月        政府がめぐみさんら10人、7件の行方不明事案を北朝鮮による拉致と認定

2002年9月        日朝首脳会談で、北朝鮮はめぐみさんが「死亡」したと伝える

2002年10月       政府はDNA型鑑定から、ヘギョンさんがめぐみさんの娘と確認

2004年11月       北朝鮮・平壌で日朝実務者協議。北朝鮮はめぐみさんのものとして遺骨を提示。後に偽物と判明

2006年5月        滋さんらが訪韓し、金英男氏の家族と面会

2011年11月       ヘギョンさんが北朝鮮の男性と結婚していたことが判明

2014年3月10日~14日 滋さん、早紀江さん夫妻がヘギョンさんとウランバートルで初面会

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