SankeiBiz for mobile

【拉致再調査】生存なら帰国 横田さん「最後の機会。ぜひ成果を」

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

【拉致再調査】生存なら帰国 横田さん「最後の機会。ぜひ成果を」

更新

北朝鮮による拉致被害再調査の報告を受けて記者団の質問に答える横田滋さん、早紀江さん夫妻=2014年5月29日夜、神奈川県川崎市(蔵賢斗撮影)  安倍晋三首相(59)は5月29日、スウェーデンのストックホルムで行われた日本と北朝鮮による外務省局長級の政府間協議を受け、北朝鮮による全ての日本人拉致被害者と拉致の可能性が排除できない特定失踪者について再調査することで合意したと発表した。再調査の合意は、2012年の金正恩体制発足後では初めて。北朝鮮側は、拉致被害者らの生存が確認された場合、日本に帰国させる方向で調整する。北朝鮮に拉致された横田めぐみさん=拉致当時(13)=の父、滋さん(81)は29日、合意を受けて「最後の機会と思う。ぜひ成果を挙げてほしい」と、祈るように述べた。

 制裁一部解除へ

 安倍首相は官邸で記者団に「北朝鮮側が、拉致被害者と拉致の疑いが排除されない行方不明者を含め、全ての日本人の包括的全面調査を行うことを約束した。特別調査委員会が設置され、調査がスタートする」と説明した。その上で「全面解決へ向けて第一歩となることを期待する」と述べた。日本政府は北朝鮮の特別調査委員会による再調査が始まった時点で、人的往来など日本独自の制裁措置の一部を解除する方針だ。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は首相の発表後に記者会見を行い、再調査開始時に解除する北朝鮮への日本の独自制裁措置について、人的往来や送金規制、人道目的の北朝鮮籍船舶の入港禁止などを挙げた。また、北朝鮮が設置する特別調査委は「北朝鮮が構成や責任者を日本側に通報する」としたほか、発足まで3週間前後かかるとの見通しを示した。再調査の期間に関しては「いつまでということは決まっていない」とも述べ、期限は区切っていないことを明らかにした。北朝鮮が再調査する拉致被害者らの人数も「掌握していない」と語った。

 朝鮮中央放送など、北朝鮮国営メディアも日本側の発表に合わせ、29日午後6時半(日本時間同)、「朝日政府間会談結果に関する報道」と題し、「わが方は、日本人の遺骨や墓地、残留日本人、日本人配偶者、拉致被害者、行方不明者を含む全ての日本人に対する包括的調査を全面的に同時並行して行うこととした」と発表した。

 経済的利益狙う北

 今回の合意の最大のポイントは、北朝鮮が「拉致問題は解決済み」としてきた従来の立場から「日本人に関する全ての問題を解決する」との立場に転換した点だ。北朝鮮の狙いは、合意文書に記された「1945年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨および墓地」の調査にある。遺骨収集に伴う経済効果が期待されるためで、日朝外交筋によると、約2万人とされる遺骨収集が仮に実施されれば、日本から間接的な「人道支援」名目の資金が流れ込むことになる。北朝鮮が経済的な利益を優先しようとしている点を踏まえ、遺骨収集を再調査の枠組み中に組み込むという「知恵」を持ち寄ったといえる。

 日本を突破口に

 また、北朝鮮は来年、朝鮮労働党創建70周年の大きな節目を迎えるが、日米韓相手の外交で北朝鮮が現在、成果が望めそうなのは日本だけだ。

 中国や韓国と歴史問題であつれきを抱え、米国ともぎくしゃくする日本に狙いを定め、袋小路にある外交環境の突破口を開こうとしたとみられる。

 北朝鮮は安倍首相を「極右」と批判しつつ、北朝鮮に厳しい保守勢力内での影響力の大きさと、手堅い政権運営に注目してきた。合意を受け、拉致被害者の蓮池薫さん(56)、祐木子さん(58)夫妻=新潟県柏崎市=は29日、「希望の持てる第一歩だと考える」とのコメントを出した。(SANKEI EXPRESS

ランキング