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日米韓首脳会談 対北で連携強化 歴史封印も日韓「雪解け」なお遠く

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日米韓首脳会談 対北で連携強化 歴史封印も日韓「雪解け」なお遠く

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朴槿恵(パク・クネ)・韓国次期大統領(保守系与党、セヌリ党)プロフィル=2012年12月18日現在  安倍晋三首相とオバマ米大統領、朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領は3月25日夜(日本時間26日未明)、ハーグの在オランダ米国大使公邸で約45分間会談し、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に共同対処することで一致、北東アジアの安全保障をめぐり連携を強化する方針を確認した。日韓間の懸案となっている慰安婦などの歴史問題や竹島(島根県隠岐の島町)問題は話題にならなかった。

 首相と朴氏の公式会談は両首脳の就任後初めて。日韓関係の悪化を憂慮するオバマ氏の仲介で実現した。

 オバマ氏は会談で「日韓両国はアジア地域の最も力強い同盟国だ」と強調。朴氏は「3カ国間の協調が重要な時にオバマ、安倍両氏と意見交換の機会を持てて意義深く思う」と語った。

 安倍首相は「北朝鮮問題に関して日米韓の緊密な連携を確認することは重要だ」と指摘し、核・ミサイル開発だけでなく日本人拉致事件などの人道問題でも3カ国連携を呼び掛けた。朴氏は「北朝鮮の核問題は日米韓を含む国際社会が団結して対応していくことが重要だ」と応じ、オバマ氏も「外交的、軍事的に3カ国の協調を強化したい」と述べた。

 オバマ氏のお膳立てで安倍氏と朴氏がようやく同じテーブルに着いた。首相は日韓間の「溝」を広げる要因となっている歴史認識問題を封印し、日韓関係改善への糸口を探った。しかし韓国国内の厳しい「反日世論」を背にする朴氏の対応は“事務的”の域を出ず、日韓の「雪解け」はなお遠い現実を印象づけた。

 冷え込む日韓関係を象徴する空気は、会談冒頭から隠しようもなかった。首相は韓国語で「朴大統領、お会いできてうれしい」とあいさつしたが、朴氏は一瞥(いちべつ)しただけで厳しい表情を崩さなかった。記者団に3人での握手を求められても、首相と朴氏は逡巡(しゅんじゅん)しオバマ氏が苦笑する場面もあった。

 会談では、核・ミサイル開発を進める北朝鮮問題への共同対処で一致した。ただ、対北連携は日米韓間の“定番”の確認事項。首相は歴史認識だけでなく、自身の「積極的平和主義」政策などに関する言及も控えた。

 日本にとって、安全保障上の「脅威」となる北朝鮮や中国を牽制(けんせい)するためには、韓国との正常な関係が不可欠だからだ。首相は慰安婦募集の強制性を認めた「河野洋平官房長官談話」を見直さないと宣言してまで、韓国と真剣に向き合う姿勢を示してきた。

 そうして実現した首脳会談。首相は会談後、「未来志向の日韓関係を発展させる第一歩にしたい」と語った。周辺には安堵(あんど)の表情で「最後は握手してよかった」と漏らした。

 確かに今回の3カ国首脳会談は日韓関係修復へのキックオフとなった。4月中旬には両国の局長級協議が始まる。だが、最大の対立点である歴史認識で折り合うことは厳しく、ゴールは限りなくおぼろげだといえそうだ。(ハーグ 水内茂幸/SANKEI EXPRESS

 《「悩む朴大統領」 国内向けに演出》

 韓国メディアは3月26日、安倍晋三首相が日米韓首脳会談の冒頭、韓国語で朴槿恵(パク・クネ)大統領に話しかけた映像を流し、「韓国への配慮が感じられる」と伝える一方、朴大統領が「相づちも返事もしなかった」とも強調。「日本に対して穏やかならざる、われわれの心境を表したもの」と解説した。

 朴大統領は、安倍首相に対し歴史認識問題で一方的に譲歩を求め続け、「対話のための対話はしない」と会談を拒否してきた。歴史認識問題という最重要テーマを棚上げして臨んだ今回の会談は、大統領にとって最初から評価できるものではなく重荷だった。

 会談の成果に関し、韓国大統領府は「『対話のための対話』ではなかった」(聯合ニュース)として北朝鮮問題での成果はアピールしたものの、歴史問題には全く触れなかった。

 今回の会談への出席をめぐり、韓国には「米国から要請を受けた時点で既に欠席の選択肢はなかった」(韓国与党関係者)という。朴大統領が会談出席を決めたとする韓国側発表をハーグ出発直前まで引き延ばしたのも、国内向けに“最後まで悩み抜いた”とみせるためだったともいえる。

 安倍政権の歴史認識を厳しく追及する韓国メディアが、米国の取りなしで実現した今回の日韓首脳対話を見る目は厳しい。こうしたメディアの論調や世論を受け、韓国政府は今後の日韓局長級協議で、歴史問題で従来通り厳しい姿勢を維持するとみられる。(ソウル 加藤達也/SANKEI EXPRESS

 《米 東アジアの緊張緩和に腐心》

 日米韓首脳会談の結果について、オバマ米大統領に同行している政府高官は「不和はなく3カ国関係の重要性を再確認した。連携を強化する機会になったと確信している」と評価した。

 米政府は歴史認識問題での日韓対立を覆い隠しつつ、対北朝鮮という共通項に焦点を絞り「結束」を演出しようと腐心してきた。

 今回の会談を土台に、オバマ大統領は4月の日韓訪問時の首脳会談を「より生産的なもの」にし、日韓の“雪解け”と米国との連携強化を促進したい考えだ。

 米政府が関係改善を希求する理由は、「アジア太平洋地域における米国の重要な役割は、(日米韓の)同盟の強さにかかっている」というオバマ大統領の言葉に集約されている。

 アジアに安全保障の重心を移すリバランス(再均衡)戦略を進めるうえで、米国にはフィリピン、オーストラリアを含む同盟各国とのネットワークと連携の強化が、死活的に重要となっている。

 しかもオバマ政権は、アジアで東・南シナ海における中国の覇権主義と、北朝鮮の核の脅威に直面しているのみならず、ウクライナでロシアの帝国主義と対峙(たいじ)するという「2正面」を強いられている。

 今後、ロシアとの対立が長期化し、外交・安全保障のかなりの労力を割き続けなければならない状況も予想される。それだけに、オバマ政権にはアジア、とりわけ東アジアでの緊張緩和を図ることが、いっそう重要になっている。(ワシントン 青木伸行/SANKEI EXPRESS

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