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首相「同盟国との強い絆で抑止」 集団的自衛権めぐり党首討論

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首相「同盟国との強い絆で抑止」 集団的自衛権めぐり党首討論

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党首討論で民主党の海江田万里(かいえだ・ばんり)代表(右)と論戦を交わす安倍晋三(しんぞう)首相首相=2014年6月11日午後、国会(共同)  安倍晋三首相(59)は6月11日、今国会初の党首討論に臨み、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈変更について「与党の真剣な議論の結果、政府としての立場を決定し、閣議決定する。切れ目のない防衛を行い、同盟国との関係を強化し、強い絆でしっかり抑止を効かせる必要がある」と改めて決意を表明した。

 首相は「紛争が起こって、そこから逃れようとする邦人を輸送する米国の船が襲われたとき、その船を守れなくてよいのか。現在の憲法解釈ではできない」と米艦防護の事例を引き合いに、解釈変更の必要性を主張。「国民の平和と命を守ることを願って作られた憲法が、国民の命を守る責任を果たさなくてよい、と言っているとは思えない」と語った。

 ただ、集団的自衛権の行使が可能になった場合でも「個別的自衛権と同様に必要最小限度という歯止めはかかる」と理解を求めた。憲法改正については「国民的に議論が深まることを期待したい」と述べた。

 このほか、中国や北朝鮮を念頭に「南シナ海で力で現状変更しようとする試みが続いている。日本の上空でも自衛隊機に異常接近する事態が起こっている。近隣国は日本をミサイルの射程に入れ、かつ核開発を行っている」と非難した。

 党首討論は昨年(2013年)12月以来で、第2次安倍内閣では3回目。民主党の海江田万里(かいえだ・ばんり)代表(65)、日本(にっぽん)維新の会の石原慎太郎共同代表(81)、みんなの党の浅尾慶一郎代表(50)が論戦を挑んだ。

 ≪海江田氏 攻勢も中途半端で返り討ち≫

 民主党の海江田(かいえだ)代表は党首討論で、党内で賛否が割れる集団的自衛権の問題1本に絞り、あえて勝負に出た。「海江田降ろし」を封じるため、戦う姿勢をアピールした形だ。だが保守系、リベラル系双方に配慮した中途半端な攻撃は、安倍首相の返り討ちに遭い、不発に終わった。一方、崖っぷちのはずの海江田氏に対し、反執行部の動きも頭打ちの状態で、“決められない”党の体質は変わらないようだ。

 党首討論で海江田氏は「民主党の見解を申し上げます」と切り出し、「集団的自衛権の行使一般を容認する変更は許されない」と強調した。党内の保守系とリベラル系の対立を首相に指摘されるのを防ぐための作戦だった。だが、両勢力に配慮した結果、迫力不足は否めなかった。

 党見解は「行使そのもの」への立場をまとめていない。首相が「果たして立場はどこにあるのかよく分かりませんでしたね」と切り返すと、場内には失笑が漏れた。海江田氏は集団的自衛権を「集団的安全保障」と言い間違えるなど、気合は空回りした。

 「自衛隊員に犠牲を払ってくれと言えるのか」

 こう感情論で攻める海江田氏に対し、首相は「みんなの党、日本(にっぽん)維新の会は批判があっても現実に向き合っている」と指摘する一方で、「早く民主党の安全保障の議論がまとまることを期待したい」とエールを送る余裕ぶりだった。

 成果が乏しかった海江田氏だが、党首討論の成否を機に代表選前倒し論を加速させる考えだった中堅・若手の動きも鈍化している。

 衆院当選3~4回生は6月11日夜、都内で会合を開いたが、「党首討論直後に集まると具合が悪い」として出席を断る議員も出た。「党首討論後に出す」と1~2回生中心に始めた代表選の立候補要件緩和を求める署名活動も30人超から伸び悩み、「また党内で抗争していると見られるのはよくない」との判断が広まっていることも影響したようだ。

 海江田氏を「野党をまとめる努力が足りない」と批判した前原誠司前国家戦略担当相(52)も、討論前の記者会見で「離党はない。理念を共有できる野党との協力を強化する観点から海江田執行部に意見を申し上げた」とトーンを落とした。

 決め手を欠く反執行部を見透かすように海江田氏は討論後、記者団に代表選前倒し論について聞かれると、こうけむに巻いた。

 「そんな声はあるんですかねえ」(楠城泰介/SANKEI EXPRESS

 ≪石原氏 江田氏を批判≫

 日本(にっぽん)維新の会の石原共同代表は安倍首相との党首討論で、結(ゆ)いの党の江田代表を「なんとかという党の党首」と呼び「自主憲法制定」を江田氏が嫌ったことが維新分党の一因となったことから「消えてなくなった社会党と同じような言い分だ」と痛烈に批判。さらに、石原氏は「維新内には他党との合流を熱願する向きがあった」とも述べ、江田氏との合流を目指す橋下徹共同代表グループの動きも牽制(けんせい)した。

 石原氏はその後、持ち時間のほとんどを使って日米同盟などに関する持論を展開。最後は「非常に大事な質問をしようとしたのに…」と延長を訴えたが、かなわなかった。(SANKEI EXPRESS

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