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「法の支配」強調 首相、中国を批判 海洋安保 シャングリラ対話で講演

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「法の支配」強調 首相、中国を批判 海洋安保 シャングリラ対話で講演

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 安倍晋三首相(59)は5月30日、アジア安全保障会議(シャングリラ対話)に出席するため政府専用機でシンガポールに到着した。夜には会議で講演し、「法の支配」の順守を強調。南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)、パラセル(中国名・西沙)両諸島での領有権争いに関してフィリピンやベトナムの行動を支持し、「既成事実を積み重ね現状の変化を固定しようとする動きだ。強い非難の対象とならざるを得ない」と中国を批判した。

 首相は、「海における法の支配」について「国家は法に基づいて主張する」「力や威圧を用いない」「紛争解決には平和的収拾を徹底すべし」との3原則を示し、「当たり前のことであり、人間社会の基本だ」と表明した。

 その上で「最も望まないことは、威圧と威嚇が、ルールと法に取って代わり、不測の事態が起きないかと恐れなければならないことだ」と指摘。南シナ海で中国がベトナムやフィリピンと領有権をめぐり対立していることや、日中間の連絡メカニズムが運用に結びついていないことを挙げて、中国に対し「交わすべきは言葉だ」と交渉のテーブルにつくよう促した。

 また、「米国との同盟を基盤に、東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携を重んじながら、地域の安定、平和、繁栄を確固たるものとしていく」と述べ、日米同盟の基軸としたASEAN地域の安全保障に貢献する姿勢を表明。空や海などの国際公共財を重視する姿勢を打ち出し、ASEAN各国に「航行、飛行の自由を保全しようとする努力に支援を惜しまない」と約束した。

 日本が戦後70年近くにわたり平和国家として歩み続けてきた実績を踏まえ、世界平和に貢献する「積極的平和主義」に基づく取り組みを強化する姿勢を打ち出した。さらに「もっと世界の平和に貢献したい」と訴え、首相が目指す集団的自衛権の行使容認や国連平和維持活動(PKO)について政府・与党内で検討を進めていることを強調、各国の理解を求めた。(シンガポール 比護義則/SANKEI EXPRESS

 ≪ASEANの対中意識 変えるチャンス≫

 安倍首相は5月30日のアジア安全保障会議の講演で「海における法の支配」の重要性を説いた。「力や威圧」による中国の南シナ海進出を批判し、中国と領有権争いをするフィリピンやベトナムなどASEAN各国とは「法の支配」で価値観を共有させ、対中包囲網を形成する狙いがある。

 強いメッセージ

 首相は出発前の官邸で記者団に対し「力による現状変更は決して許さないというメッセージを強く発出したい」と意気込んだ。政府高官も、「中国の海洋進出がASEANの対中意識を大きく変えることができるチャンスになる」(政府高官)とみている。

 演説での中国批判は、激烈ともいえる内容だ。

 「法の支配」の意味について、首相は「国際法に照らして正しい主張をし、すべからく平和的解決を図れ、ということだ」としている。演説はそれで終わらず、「その当たり前のことを、あえて強調しなくてはならない。アジア・太平洋に生きるわれわれ、一人一人が(法の支配の)原則を徹底順守すべきだ」とも言い切る。

 積極的平和主義に賛意

 この間に名指しはないものの、中国のみが「法の支配」を順守していないと徹底的に指摘しているのは明らかだ。

 安倍首相は、(5月)22日にはマレーシアのマハティール元首相、ベトナムのダム副首相と日本で相次いで会談、中国に対する懸念の共有と海洋安全保障分野での連携を確認した。特にダム副首相は、安倍首相が掲げる積極的平和主義についてベトナムとして初めて賛意を示すなど、対中包囲網に向けた日本とASEAN諸国との連携も強まり始めた。

 また、中国は日本の集団的自衛権の行使容認に向けた動きに警戒感を示しているが、日本は「積極的平和主義」を掲げることで「力による現状変更」をもくろむ中国との違いを強調。中国の海洋進出には米国も非難しており、ASEANでの日米連携も訴える機会にもなる。

 連携の重要性増す

 首相は、2012年末の第2次政権発足後、ASEAN加盟10カ国をすべて訪問した。中国が昨年(2013年)11月、尖閣諸島(沖縄県石垣市)上空に防空識別圏を設定してからは対中戦略上、ASEAN諸国との連携の重要性は増している。

 ただ、日本が参加した昨年(2013年)12月のASEAN10カ国との特別首脳会議では共同声明で日本が求めた「安全保障上の脅威」が盛り込まれなかった苦い経験がある。日本は11月にミャンマーで開かれるASEAN諸国との防衛相会議などを通じて、働き掛けをさらに強める構えだ。(SANKEI EXPRESS

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