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集団的自衛権 政府、15事例を提示 「グレーゾーン」 自公、合意見送り

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集団的自衛権 政府、15事例を提示 「グレーゾーン」 自公、合意見送り

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 自民、公明両党は5月27日、集団的自衛権の行使容認を主題とする「安全保障法制整備に関する与党協議会」の第2回会合を国会内で開いた。政府は米国に向かうミサイル迎撃や米艦防護など15項目の「事例集」を示し、このうち武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」や国連平和維持活動(PKO)などに関する7事例を説明した。だが、集団的自衛権の議論を遅らせたい公明党の思惑に、政府側の説明の不手際が相まって、実質的に議論できたのは、初めの2事例にとどまった。

 政府側は「離島等での不法行為への対処」について、「領土・領海の治安維持の第一義的な対応は警察や海上保安庁だが、離島に警察機関が存在せず、海保も近くにないことから、速やかに対処するのが困難な場合がある」と説明した。自民党側も「早期に現行法の隙間を埋めなければならない」として新たな法整備を求めた。

 これに対し、公明党側は尖閣諸島(沖縄県石垣市)への武装集団上陸を想定し、「現実に自衛隊、海上保安庁、警察の連携に不備や隙間があるのか」と主張し、法整備の必要性に疑問を投げかけた。政府事例集の表現についても「離島『等』」の範囲を問いただし、政府側は「警察施設が遠い北海道地域など日本本土を想定している」と答えた。

 協議では、政府側の連携の不手際もあった。

 1997年2月に鹿児島県下甑(しもこしき)島で中国人集団密航事件が起きた際に、県警の駐在員しかいなかったため、現地の航空自衛隊部隊が地元警察の要請を受け、「訓練」名目で捜索に協力したケースを示した。

 これについて、捜索要請の有無をめぐり防衛省は「警察から要請を受けた」と説明、警察庁は「要請しなかった」と反論した。公明党側の質問に政府の説明者が明確に答えられない場面もあり、自民党からも「政府がきちんと説明できなければ、公明党に納得してもらえない」(国防族)と不満があがった。

 自民党側はこの日の協議で「グレーゾーン事態」について合意し、次回協議では国際協力を議論するシナリオを描いていたが、グレーゾーンの2事例の議論で協議は終了した。

 公明党の北側一雄副代表(61)は会合後、記者団に対し「事例は運用にかかわる問題が多い。何らかの法制が必要とは現時点で考えない」として法整備に慎重な考えを強調した。座長を務める自民党の高村(こうむら)正彦副総裁(72)も記者団に「(両党の)認識が一致したとは必ずしもいえない」と説明した。

 6月3日の次回協議で、政府側は集団的自衛権に絡む8項目の説明に入る予定だ。しかし、次回協議でグレーゾーン分野が合意できるかどうかは微妙だ。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は27日の記者会見で、政府側のスケジュールについて「与党協議の結果に基づき、政府としての対応を検討する。憲法解釈の変更が必要と判断されれば、閣議決定する」と述べた。

 ≪防衛相命令で出動 離島防衛の親類型検討≫

 武装集団が離島へ不法上陸した際の自衛隊対処として、政府が防衛相の命令で出動できるようにする新たな行動類型の設置を検討していることが5月27日、分かった。自衛権に基づく「防衛出動」と警察権に基づく「治安出動」の際に必要となる閣議決定と国会承認を省き、海上保安庁や警察が対応できない場合に自衛隊の速やかな対応を可能にするためで、有事に至らない「グレーゾーン事態」への具体的対応の柱とする。

 政府内で検討されている新類型は、防衛出動と治安出動の間に位置づける。ただ、新類型は外国航空機が国際法に違反して領空に侵入する場合の「対領空侵犯措置」や「弾道ミサイルの破壊措置命令」を参考にする。

 対領空侵犯措置の場合、命令決定権者は防衛相にあり、首相の命令・承認や閣議決定は不要だ。手続きが複雑な防衛出動では間に合わない事態に備えて、弾道ミサイルの破壊措置命令も、防衛相が首相の承認を得て命令できる。

 制度が柔軟なのは、瞬時を争い迅速な対応が求められる上、自衛隊しか対応できないことが背景にある。武器使用による国民への影響が少ないことも共通点にあり、「グレーゾーン事態も似た状況にある」(政府関係者)という。自衛隊の最高指揮官である首相の承認を要件に加えることも検討している。

 新類型の武器使用基準は「治安出動」を準用する。根拠規定となる自衛隊法90条は、武器使用の範囲を正当防衛などに限定せず「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」と定めている。自衛隊は「暴行や脅迫の鎮圧」もできる上、武器使用基準を拡大しないため、自衛隊の権限強化に慎重な公明党の理解が得やすいとみている。

 ただ政府内には、「現行法制に隙間はない」とする公明党への配慮から、自衛隊出動の可否判断をあらかじめ閣議決定で首相に一任する案も浮上している。グレーゾーン事態の対応については自民、公明両党の「安全保障法制整備に関する与党協議会」が27日、議論を本格化させた。(SANKEI EXPRESS

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