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夢追い求めるモード界の「ミューズ」 ヴォーグ元編集長のドキュメンタリー映画
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大きくシャツの襟元をあけ、ジャストフィットしたタイトスカートに身を包んだカリーヌ・ロワトフェルド(提供写真)
「ヴォーグ」(仏版)の元編集長で、現在「ハーパーズ バザー」のグローバル・ファッション・ディレクターを務めるファッション編集者、カリーヌ・ロワトフェルド(59)の日常を追ったドキュメンタリー映画「マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ」(ファビアン・コンスタン監督)が5月9日から公開される。仕事ぶりはもちろん、生き方や洋服の着こなしまで注目され、ファッションの女神と呼ばれる人物。映画公開に合わせ、そんなマドモアゼルCの魅力に迫ってみた。
ランバンのデザイナー、アルベール・エルバスが「創造性豊かで、夢想家」だといえば、スーパーモデルのリンダ・エヴァンジェリスタは「パリ風シックの化身」と評し、トム・フォードやカール・ラガーフェルドらカリスマデザイナーたちが「ミューズ」と敬意を込めて呼ぶ。カリーヌ・ロワトフェルドについて語られた言葉を拾うだけで、これまで彼女がモード界に与えてきたインパクトの大きさがうかがえる。
こうした証言を裏付けるのが映画「マドモアゼルC」だ。2011年、10年かぶり続けたヴォーグ編集長という王冠を脱いだカリーヌが、自身のイニシャルを冠した新雑誌「CR ファッション ブック」創刊に向け、高いヒール靴で駆け回る姿をおさめたドキュメンタリーだ。
1954年、仏パリ生まれ。ロシア人の映画プロデューサーを父に持つ。18歳でモデルになるが、20代以降、「エル」を振り出しにファッション誌の編集者に。写真家マリオ・ティスティーノとともに手掛けた官能的で美しいファッションページは「ポルノ・シック」と形容され、強い印象を残した。
映画が伝えるのは、彼女の卓越したセンスとハードな仕事ぶりだけではない。最も印象を残すのは、常に夢を追う情熱的な横顔だ。映画の序盤、「(ファッションを)巨大な産業としてではなく、夢として扱いたい」と目を輝かせる。ファッションが持つ創造性やパワーを心から信じるから、より独創的で、ファンタジーに満ちた究極のファッション誌を作りたいと、新たな一歩を踏み出したのだ。“妨害”に見舞われ、かつての仕事仲間が去っても、「邪魔されチャンスが広がった。新しい写真家やモデルを発掘できた」と動じない。凛々しくたくましい生き方に魅了される。
本作のもう一つの楽しみは、カリーヌ自身のファッションを堪能できる点だ。
「タイトスカートにピンヒールは彼女のトレードマークです」と、日本版「ハーパーズ バザー」のファッション クリエイティブ ディレクター、菊池直子さん。確立されているのに、常に新鮮なカリーヌのスタイルは、コレクション会場で大量のフラッシュを浴びて写真となり、世界中に配信され、モード誌を飾ってきた。
NYコレクションで、たびたびカリーヌのスタイルをカメラに収めてきたファッションジャーナリストの宮田理江さんは、「腰から下をタイトにセクシーにまとめつつ、上半身にシャツやジャケットといったシャープなアイテムを組み合わせた、フェミニン×マニッシュのテイストミックスが特徴」と読み解く。シャツの着こなしについては、「フレンチシックのお手本。程よくリラックス感を出しているのが彼女の上手なところ」と評した。
そのすてきな着こなしを見習いたくなるが、ハーパーズ バザーの菊池さんも、ファッションジャーナリストの宮田さんも「何でもかんでもそのままマネをするのは違う」と口を揃える。「まずは自分のイメージを客観的に理解することから始めるのが大切」(宮田さん)。
「ファッションとは変身すること。夢の自分に近づくこと」。映画のインタビューで、カリーヌは言う。
カリーヌに刺激され、理想の自分を思い描いてみたら、まずは自分自身の実像と向き合ってみよう。そうすれば、自分に似合うシャツや、スカートがきっと見つかるはずだ。(津川綾子/SANKEI EXPRESS)
■映画「マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ」 5月9日からTOHOシネマズシャンテ(東京)ほか全国公開。mademoiselle-movie.com