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継承と創造 融合で新しいスタイル LAILA TOKIO

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継承と創造 融合で新しいスタイル LAILA TOKIO

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無機質なピラミッドの連なりと、丸太の形をとどめる梁(はり)が共存する店内は、アーティスト、木村浩一郎さんのデザイン=2014年4月3日、東京都渋谷区の「LAILA_TOKIO」(野村成次撮影)  【Fashion Addict】

 丁寧に作られた品には、その作り手の物語が感じられることがある。デザイナーや職人が、何にこだわり、どんな思いを込めたのか。そんな想像を巡らせたくなるような品々をセレクトしているのが、東京・渋谷に昨年(2013年)7月オープンした「LAILA TOKIO(ライラ トウキョウ)」だ。

 ビンテージ+モダンな感覚

 店内に一歩入る。すると目を奪われるのが、壁という壁を覆う8000個の小さなピラミッドの連なりと、床の照明が乱反射して生まれたまばゆい白。国内外で注目を集めるアーティスト、木村浩一郎さんが手がけた。近未来的なインテリアに驚いていると、「実はここ、築50年の日本家屋だったんです」とライラ トウキョウのディレクター、hashiura(ハシウラ)さん(44)。古い梁と無機質なピラミッドが共存する空間は、「伝統の継承」と「自由な創造性」が混在したニュークチュール(新しいエレガントなスタイル)の提案、というライラ トウキョウのコンセプトを直感的に伝えてくる。

 ハシウラさんは、1990年ごろから欧米のビンテージアイテムの買い付けを始め、審美眼を磨いてきた。特に20年代以降に活躍したクチュリエ(高級仕立て服のデザイナー)たちの、手仕事の痕跡が残る洋服の数々に魅せられた。

 「過去の歴史の中に受け継がれてきたものづくりの良さや、デザイナーたちのこだわりを伝えていくのが僕の仕事」と、2003年、東京・北青山に「LAILA VINTAGE(ライラ ビンテージ)」を開店。アイテムそれぞれにある、デザインが生まれた背景や、生地や縫製など細部に込められたデザイナーの思いなどを読み解き、その物語を洋服とともに顧客に供してきた。

 さらに服飾の伝統と、ファッションの最先端とを融合させれば、新たなスタイルが生まれるのでは-。ライラ トウキョウでは、そんな発想を形にし、ビンテージのものにモダンな感覚を加えて生み出されたアイテムがそろう。

 ワンピース解体、パッチワーク

 その象徴が、「リファブリック」と名付けられたシリーズ。1980年代のイヴ サンローランや、クリスチャン ディオール、ベッツィ ジョンソンなどのビンテージのワンピースを解体、パネル状にした布をパッチワークして、ストールや帽子に仕立てている。ストールの柄の継ぎ目に施されたアートステッチはメゾンブランドで働いていた職人が手縫いしている。「1点として同じものはありません。こうした品から言葉では伝わらない手仕事の温かみを感じてもらえたら」とハシウラさん。

 ジュエリーブランドの60年以前のアンティークの銀食器を指輪やブレスレットにリメークしたオリジナルブランド「カトラリー&ビジュー」は、柄の先についた、使っていた人のイニシャルの彫金細工などがそのまま生かされている。ハシウラさんは「ここまで繊細でエレガントな彫金は、当時の職人技ならでは。それをデザインの中に残したかった」と思いを語った。

 現代作家のアクセサリーも

 洗練された手仕事の温かみを現代的に再構築するだけではない。ライラ トウキョウには、ハシウラさんが海外で発掘した、ハンドメードにこだわる現代作家のアクセサリーもそろう。仏パリのデザイナー、ハンナ・ベーズが2010年に起こしたジュエリーブランド「アーシェル」のブレスレットは、パソコンの電子基板の機構にデザインのヒントを得て生まれた。一つ一つ、小さなピクセルをピンセットでつまんで貼り合わせ、作られているという。

 一方で、服飾史のアーカイブのようなコーナーも。1990年代にミニマリズムを極めたヘルムート ラングのニットやブルゾン、現在ディオールのアーティスティック・ディレクターを務めるラフ・シモンズが2000年代に生んだビッグシルエットのパーカーやスエットなどもそろえる。「ビンテージと呼ぶには新しくてもそのデザイナーの感性が今の時代に響くものを紹介したくて」。そう言って、ハシウラさんはミニマリズムの歴史を語り出した。(文:津川綾子/撮影:野村成次/SANKEI EXPRESS

 ■LAILA TOKIO 東京都渋谷区渋谷1の5の11の2階 (電)03・6427・6325。午前11時30分~午後8時 無休

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