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軽やかに心地よく 自然とテクノロジー融合 ISSEY MIYAKE×小松宏誠 「Wearing Light」

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軽やかに心地よく 自然とテクノロジー融合 ISSEY MIYAKE×小松宏誠 「Wearing Light」

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プリーツの羽根を使った小松宏誠(こうせい)さんのシャンデリア。薄いブルーはカワセミ、濃い紫はヤマショウビンの羽根の色を参照した色合い=2014年3月23日、東京都中央区の「ELLTOB_TEP_ISSEY_MIYAKE/GINZA」  【Fashion Addict】

 白いガチョウの羽根でできた花束が、クルクルと透明な箱庭の中で舞う。すぐそばの窓辺には、ブルーやパープルの“羽根”でできたシャンデリア状のモビール(動く彫刻)が、光を柔らかく散らしながら、ゆっくりと回転している。だが色鮮やかな“羽根”のほうは…よく見るとプリーツ素材の布! これは「ISSEY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)」が得意とするプリーツで人工の羽根を作り、アーティスト小松宏誠(こうせい)さん(32)が制作したインスタレーション作品。イッセイ ミヤケの2014年春夏のテーマ「Wearing Light(ウェアリング ライト)」に合わせ、東京・銀座にあるイッセイ ミヤケのブランド複合店「ELTTOB TEP ISSEY MIYAKE/GINZA(エルトブ テップ イッセイ ミヤケ/ギンザ、以下エルトブ)」の店頭に登場している。

 小松さんは鳥の進化や、存在の美しさをテーマに、ガチョウの真っ白な羽根を使って、詩的で美しい作品を生むアーティスト。一方、イッセイ ミヤケのデザイナー宮前義之さん(37)も自然界から着想源を得る一人。

 宮前さんは昨年(2013年)、美術館で小松さんの作品を偶然見て、誰もがきれいだと感じるシンプルな力強さに魅かれた。一方、小松さんはアート集団「アトリエオモヤ」としてエルトブ店内装飾に携わった経験があり、吹き抜けの高い天井を見て自身の作品「シャンデリア」を飾ってみたいと気持ちを膨らませていた。

 お互いを意識して間もなく、2人はイッセイ ミヤケの展示会で意気投合。その際、小松さんが何げなく言った「プリーツで羽根ができないですか?」の言葉に、宮前さんは紙を1枚、ささっと折って見せた。

 「人工の羽根があれば作品の大型化や量産ができるのに…とずっと胸にしまってきた思いが、宮前さんのものづくりの姿勢に触れて、ばしっと開いて。宮前さんが折ってくれたプロトタイプを見て、正直驚きました」と小松さん。そこから試作を重ねて、プリーツ羽根はできあがり、豊かなコラボレーションが花開いた。

 美しいものには存在理由がある

 2人のクリエーションには共通点が多い。ともに自然に存在するものの美しさに魅せられ、その表現には、高度なテクノロジーを使う。

 「自然界にある美しい“かたち”や“色”などは、すべてに存在理由があります。その造形美から得るものは多く、常に魅せられます。対して、私自身の想像できることは当然限られています。モノづくりのプロセスの自然な流れとして“自然”と向き合っています」と宮前さん。

 今季春夏のイッセイ ミヤケのテーマである「ウェアリング ライト」は、宮前さんが旅先で見た光などを着想源に、星の光や夕日、空の青などさまざまな光を洋服のデザインに表現。ライトには「軽さ」の意味が込められており、シャツやスカートはシンプルでシャープなシルエットに仕立てられた。

 光と軽さ。自然にヒントを得た2つのライトを、小松さんはシャンデリアや風見鶏として見事に表現した。

 シャンデリアに使ったプリーツ羽根の色は、自然界からインスピレーションを得た。薄いブルーはカワセミ、濃い紫はヤマショウビンの羽根の色を参照。小松さんはイッセイ ミヤケから提供された大、中、小のプリーツ生地をミシンで羽根の形に縫い、ガチョウの羽根を芯にして、一つ一つシャンデリア状に組み上げた。

 「プリーツ羽根」の商品

 一方、この美しい「プリーツ羽根」は商品にもなった。ピンクやブルー、黄色など、裁断した部位により濃淡が異なる小さなプリーツ羽根を3色ずつ組み合わせ、ネックレス(1万5120円)、ブローチ(1万2960円)、イヤリング(1万5120円)に仕立てた。

 自然とテクノロジーが融合して生まれた「ウェアリング ライト」のコレクションとインスタレーション作品は、春風のように軽やかで心地よい。今後、伊勢丹新宿店、阪急うめだ本店、ISSEY MIYAKE/KOBEの3店を巡回する。(津川綾子、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■みやまえ・よしゆき 1976年生まれ、東京都出身。98年、文化服装学院アパレルデザイン科を卒業。2001年、三宅デザイン事務所入社。三宅一生氏と藤原大氏が率いるA-POCの企画チームに参加。11年、ISSEY MIYAKEデザイナーに就任。

 ■こまつ・こうせい 1981年生まれ。徳島県出身。東京芸術大学大学院を修了後、アーティストグループ「アトリエオモヤ」のメンバーとして活動を開始。グループでは光、水、布、ビー玉など身近な素材が織りなす驚きや発見を追究している。

 【ガイド】

 ■「Wearing Light」は下記店舗で順次開催 4月2日まで ELTTOB TEP ISSEY MIYAKE/GINZA(東京)。4月9~15日 伊勢丹新宿店本館4階センターパーク/ザ・ステージ♯4(東京)。4月9~15日 阪急うめだ本店1階コトコトステージ11(大阪)。4月17日~5月7日 ISSEY MIYAKE/KOBE(神戸)

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