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生き方編 桜の木から学ぶ人生学

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生き方編 桜の木から学ぶ人生学

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池田重子先生の着物の刺繍をクローズアップ(提供写真)  【美のカリスマ IKKOのちょっといい話 聞きたい?】

 今年も桜の季節がやってきました。何度も引っ越しを繰り返してきた私ですが、思えばいつも桜が咲き乱れる場所に住んできました。私にとって桜は大切な木だからです。なぜそれほどまでに、桜は私を引きつけるのでしょう。それは、桜がさまざまな人生を背負っているからかもしれません。

 けなげ、たくましい

 若い頃、私は桜を「かわいそう」だと思っていました。春になると花を咲かせ、みんな、周りで花見をしたりとちやほやされる。でも、きれいなのはたった1週間だけ。散り始めると人は見向きもしない。散ってしまった花びらだけが折り重なり、朽ちていきます。葉が茂ってくれば、毛虫だらけに。「刺されると危ないから」と、人はみな桜の下を避けるようになります。秋になって葉を落とすと、冬は真っ裸で耐えぬかなければならない…。そんなけなげな姿に、「桜がつらいときに、誰が桜のことを思っているんだろう。みんな、花の時期にはあれだけワイワイ集まってきてくれたのに…」と、切ない気持ちになったものです。

 でも、年を重ねてきて、桜に対する見方が変わってきました。きっかけは、知人からこんなエピソードを聞いたこと。花が咲く直前、つぼみの時期の桜の木を使って布を染めると、それはそれは美しい色に仕上がるというのです。私はそれを聞いて、ゾクリとするものを覚えました。

 木の幹を男性、そして桜の花を女性にたとえるとしましょう。木の幹が雨の日も雪の日も耐えてためてきたものを、つぼみが全て持っていく。男が1年間ためてきたエネルギーを吸い尽くして、爆発的に咲く花。男は女のために全てをささげ、女はそれを土台に咲き誇り、全てのものを魅了する。男も女も、涙をにじませて…。これはあくまで私なりの見方ですけれど、染色のエピソードから、桜に込められた男と女の生命のリズムを感じたのです。

 さまざまな解釈できる

 そんな激しさを秘めながらも、桜の花びらはあくまでもかれん。

 そこが、桜のすごいところだと思います。たとえば、バラはいかにも「私はバラよ」と、高貴なたたずまいです。でも、桜はかわいらしく清楚な表情でありながら、人をおそろしいほどに引きつけてしまう。かわいいだけではない、たくましさ、力強さを感じます。桜がかわいらしさの裏にたくましさを持っているとすると、逆にバラって、高貴な装いの裏に純粋さ不器用さを隠しているのかも。だから、あんなにもトゲを身にまとっているのかしら…。などなど、一生懸命咲く花たちの姿に、ついつい思いをめぐらせてしまいます。

 桜は、かわいらしさの中に人生の重みをしのばせています。その重みを少しでも私の中に取り込めるようにと、池田重子先生の桜のお着物を衣装に取り入れさせていただいています。

 たくましさ、切なさとさまざまな表情をみせてくれる桜。見る人によって、それぞれの解釈をすることができます。そんな深みのある桜だからこそ、私は魅了され、桜のそばに住み続けているのです。

 大好きな桜さん。今年も美しさといろんな思い、人生を感じさせてくれて、感謝申し上げます。

 愛を込めて IKKO(美容家 IKKO/SANKEI EXPRESS

 ■いっこー 女性誌をはじめ、テレビ・CM・舞台などのヘアメークを通じ、「女優メイクIKKO」を確立。その後、美容家・タレントとして活動。最近では、コスメをはじめ、多くの女性の美に対するプロデュース業にも注目が集まる。

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