復興が進むにつれ、東北の観光産業が抱える構造的な課題も見えてきた。
「素材は多いが商品がない」。東洋大の島川崇准教授(国際観光学)は東北の観光地をこう評する。豊富な食材や手つかずの自然に恵まれながら、観光客向けの仕立てでなく、観光客1人当たりの旅行単価は国内最低。主要空港の路線数の少なさも重なって認知度も低迷している。日本政策投資銀行の調査では「行ってみたい観光地」に「東北」を挙げたアジア8地域の外国人は2.6%にとどまる。
政府は16年度の観光関連の復興予算を前年の10倍に拡充するほか、地域の魅力づくりを後押しする。だが、2月の有識者会議で示された各県の戦略はばらばらで、会議では「もっと連携できないのか」などと苦言が呈された。
廃校を宿泊施設に
こうした中、東北ならではの「素材」を生かした取り組みも始まる。
宮城県石巻市雄勝町。廃校となった旧桑浜小学校に昨夏、子供たちの歓声が響いた。豊かな里山や海を舞台に自然な暮らしを体験する宿泊施設「MORIUMIUS(モリウミアス)」。子供が自炊し、魚釣りや野菜収穫、間伐材の伐採などを体験しながら約1週間を過ごす。滞在中は親とは会わず、全国から集まった仲間たちで話し合い、1日の過ごし方を決める。