東日本大震災の発生から11日、丸5年を迎える。沿岸部を中心に一時落ち込んだ被災地の観光需要は、回復の兆しを見せている。新たな地域資源発掘に加え、欧州などからの訪日外国人客も回帰。観光客数は震災前の水準に近づいた。一方で、原状回復の遅れや風評被害が集客伸び悩みの要因ともなっており、被災地が政府の掲げる「観光立国」で一翼を担えるか正念場となっている。
「グルメ路線」が奏功
日本三景の一つとして知られる宮城県の松島。バスから降りたツアー客を出迎えたのは、冬の味覚・カキの食べ放題だ。殻付きが山盛りで運び込まれ、テーブルからは「こんなに食べたのは初めて」などと、うれしい悲鳴が上がる。企画した阪急交通社によると、ツアー参加者は前年比2倍で設定日はいずれもほぼ満席という。
震災直後、年間150万人以上も観光客数が落ち込んだ松島だが、従前から手掛けたカキ料理や高級ランチめぐりなどの「グルメ路線」が奏功。景観の被害が少なかったことも幸いし、息を吹き返した。国宝の瑞巌寺も4月に本堂の拝観が再開される予定で、東京から夫婦で来た男性(65)は「人も施設も新しくなり活気が戻った」と話す。