近代日本の経済を牽引(けんいん)していた往時の大阪をしのばせる建物が岐路に立っている。築100年前後で老朽化し、耐震性の確保が課題になっているのだ。昭和8年完成の大丸心斎橋店本館(大阪市中央区)も例外ではなく、建て替えが決まった。御堂筋側の外観は保存されるが、価値が高いとされるレリーフやステンドグラスなどの内装がどこまで残るのか、今後の建物保存や利活用の試金石になりそうだ。(牛島要平)
御堂筋のシンボル
「子供のときは大丸の食堂でお子さまランチを食べるのがハレの日の過ごし方だった」
大丸心斎橋店から徒歩5~6分のところに住んでいたという大阪府立大の橋爪紳也特別教授(建築史・都市文化論)は、約50年前を振り返る。
同店本館は、米国出身の建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計。ヴォーリズは関西を中心に多くの建物を残したが、「大丸心斎橋店本館は、昭和初期の典型的な百貨店の姿をよく伝えるヴォーリズの代表作」と語るのは、ヴォーリズ建築に詳しい大阪芸術大の山形政昭教授(建築史・建築計画)。