しかし自民党参院幹部は、「優しい性格からか、審議日程などの与野党交渉では野党に譲歩しがちだ」とも打ち明ける。佐藤氏は13年秋、特定秘密保護法案の参院質疑でも与党筆頭理事を務めたが、野党の遅延戦術に引きずられ、審議が難航。与党は12月6日だった臨時国会の会期末を法案成立のために2日間延長する事態に追い込まれた。
今回の法案審議では、衆院段階でも与党筆頭理事だった江渡聡徳(えと・あきのり)前防衛相が「野党の要求を驚くほど丸飲み」(民主党国対幹部)して衆院採決の時期が遅れ、首相は今国会を9月27日まで大幅延長せざるを得なくなった。法案は、参院送付後60日たっても採決されない場合、衆院の3分の2以上の賛成で再可決できる憲法59条の「60日ルール」が担保されている。ただ審議の遅れが目立てば、世論の批判を不必要に強め、内閣支持率の下落傾向に拍車をかけかねない。
特別委の鴻池祥肇(こうのいけ・よしただ)委員長も「起用が吉か凶か半々のばくち」(自民党参院幹部)という声がある。関係者によると、党幹部は今回の委員長人事について、派閥領袖級など複数に打診したが断られ、ようやく引き受けたのが鴻池氏だった。