「2019年ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会には間に合いませんが、お許しいただきたい」
安倍晋三首相は17日午後、首相官邸5階の執務室で、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗(よしろう)元首相と向き合いこう頭を下げた。その表情には、大会のメーンスタジアムとなる新国立競技場の建設計画を政治決断で白紙に戻す苦悩がにじんでいた。
森会長に頭下げる
13年9月、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会。安倍首相はイラク人建築家のザハ・ハディド氏がデザインした新国立競技場の完成予想図を背に「他のどんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから確かな財源措置に至るまで、その確実な実行が確証されている」と胸を張った。これがいずれも財政難のトルコ・イスタンブールとスペイン・マドリードのライバルを振り切り、IOC委員の心をつかむ決め手にもなった。