しかし、総工費が2000億円以上に膨らむとの建築家の指摘が昨年から再三あっただけに、危機感が薄く、対応が遅れたとの印象はぬぐえない。野党から「(見直すべきだとの)まともな意見に耳を傾けなかった」「(問題を)放置した」と非難されるのも無理はなかった。
涙の訴え
新国立競技場計画は、JSCが7日に開いた有識者会議で了承され、実質的なゴーサインが出た。安倍晋三首相(60)も10日の衆院特別委員会で、デザイン変更は困難との認識を示した。しかし、批判は収まらず、沈黙気味だったスポーツ界からも反対意見が沸き上がる。
元陸上五輪選手の為末大(ためすえ・だい)氏(37)は自身のブログで「どう考えても経済的に負担が大き過ぎる競技場をつくることは今の日本の状況から見ても反対」と表明。大会自体のイメージ低下を懸念する声もあり、女子マラソンの五輪メダリスト、有森裕子(ゆうこ)さん(48)は6日に東京都内で行われた計画反対派のシンポジウムで「五輪が負の要素のきっかけに思われるようなことは、一人のアスリートとして本望ではない」と涙ながらに訴えた。