連合が自民を引き合いに出し、ここまで民主を批判できるのは、自らのガバナンスに自信を持っているからだ。連合は1989年、左派と右派が労働者のための政策実現を目指して結集し、憲法9条改正などイデオロギーの是非を棚上げにした。数の力で国会などに議員を送り出さなければ、利益団体として連合の望む政策が実現できないと考えたからだ。両派の政治理念は前述のように、安全保障やエネルギー政策などテーマによっては「水と油」にもかかわらず、2009年には民主政権樹立をさせるなど、四半世紀以上も分裂を回避している。
とはいえ、旧同盟系の労組幹部は数年前、「旧総評系と一緒になるべきではなかったという考えは、今でも変わらない」と私に明言している。安倍首相が、こうした連合のイデオロギー上の矛盾を突くのは政治家として正攻法なのだが、相手を怯ませるには、まだまだパンチが足りない。(政治部 比護義則/SANKEI EXPRESS)