しかし、安保関連法案を審議する衆院平和安全法制特別委員会では、自衛隊の活動拡大による「リスク」や、自衛隊の手足を縛る「歯止め」ばかりが焦点になり、本質的な議論が欠けていると言わざるを得ない。
衆院憲法審査会で自民党推薦を含め3人の参考人全員が関連法案を「憲法違反」との認識を示したことで、野党側は、昨年7月に政府が閣議決定した憲法解釈見直しの問題まで蒸し返そうとするなど、攻勢を強めている。
もちろん、自衛隊のリスクは政治の責任で極小化しなければならないし、派遣すべき明確な理由がなければならない。だが、自衛隊を派遣することで国益が守られるという視点を忘れてはならない。
一部の野党が問題視する「歯止め」については、それが行き過ぎれば、自衛隊の行動を過度に制限して、力による現状変更を試みようとする相手を利することになる。
与党の責任とは
与党側も野党が批判する「自衛隊のリスク」や「歯止め」に対する懸念を払拭することに執着しすぎてはいないか。与党が本来、国民に訴えるべきは、安保関連法案の意義であるはずだ。そもそも日本人の生命と平和な暮らしを守るための法制に反対する国民がどれほどいるだろうか。