鰻のかば焼きには、鰻を背開きにして一度蒸してからタレ焼きにする“江戸焼き”と、腹開きにして蒸さずに地焼きする“関西風”があるが、この店は江戸焼き。軟らかさとあっさりした味わいが特徴だ。
人間国宝の杉桶
背開きした鰻を串に打ち、熊野の備長炭で白焼きに。それを蒸しにかけ、軟らかくなった鰻を竹串で扱い、秘伝のタレをつけて焼き上げる。「鰻料理はシンプルですので、素材と料理人の腕にかかっております」と赤松さん。鰻は宮崎県産を中心に国産にこだわり、コメは京都米を直接農家から仕入れる。何よりもきれいな水が必要と、元はお茶屋だった建物の造作にかかる前に、手作業で井戸を掘り直してもらったという。
「開店にあたって一番にとりかかったのは井戸掘りなんです。祇園のお茶屋さんには井戸があるものですが、今では枯れているところがほとんどです。ただ、鰻屋にとってきれいな井戸水はとても大切なものですから」
また、名物「う桶」の杉桶は、人間国宝の中川清司さんがこの店のために手がけた。