本料理として運ばれるのは、一口大に切り分けられたすっぽん肉が茶色いスープの中でぐつぐつと煮えたぎる土鍋。コークスを使って1600度以上の高熱で煮るという土鍋は100回も使用すると底が溶けだすというほど。肉質は鶏肉にも似ているが、コラーゲンをたっぷり含む軟らかい身が独特だ。料理酒として使用する伏見の酒と、各地から取り寄せたしょうゆ、そしてショウガの配合を現代人の味覚に合うよう微妙に調整したというスープはまさに絶品。小鉢に取り分けられたスープを飲み干すと、温かさが全身にしみわたる。冬場にはもってこいだ。
そして、再び土鍋で登場するのがこのスープで炊いたすっぽん雑炊。実際には雑炊のだしはスープに酒としょうゆを足して濃厚にしているそうだ。レンゲで鶏卵をつぶしご飯に混ぜ合わせて、卵とじの状態で口に運ぶと、締めの一品としては味わい深い。雑炊の中に餅が入れられているのも意外だが、粘り気のある食感が新鮮だ。香の物として添えられた千枚漬けはあっさりとして、つい箸が進む。