通好み「生き血」
「よそにはないものを…と心がけている」(青山さん)というこの日のデザートは、ミカン科の柑橘類「せとか」。薄い皮を剥いて頬張ると、ミカンに比べると甘さがぎゅっと凝縮されたような味わいだ。
通好みのすっぽんの生き血はコースメニューには含まれないが、注文があればワインで割ったりせずにそのまま提供する。苦み走った味だが、一気に飲み干すのが流儀だとか。
大市で提供されるすっぽんは全て浜名湖産。いけすには常に約50匹がスタンバイ。冬眠中は砂の中に潜り込んでいるが、身に脂がのって美味だ。
文化人に愛され
大市が登場する作品は「暗夜行路」(志賀直哉)、「古都」(川端康成)、「京まんだら」(瀬戸内晴美)…など枚挙に暇がない。文壇をはじめ政財界の人々に愛されてきた歴史がある。苔むす庭には松や椿、槇などが植えられ、伝統ある木造家屋に彩りを添える。