クリント・イーストウッド(84)、ミシェル・ゴンドリー(51)、アッバス・キアロスタミ(74)-。国籍も価値観も作風もまるで違う名匠たちの作品に積極的に出演することで、加瀬亮(40)は少しずつ自身の演技に独特の奥行きを与えてきた。そんな加瀬がもう一本、名匠の新作を自分のフィルモグラフィーに加えることになる。
韓国のホン・サンス(53)が監督兼脚本を務めた「自由が丘で」(英語作品)。青春時代の忘れ物を静かに探し続ける1人の男の姿が叙情豊かに描かれている。かつての恋人クォン(ソ・ヨンファ)を忘れることができず、モリ(加瀬)は彼女が暮らすソウルに向かった。だが、行方は一向に分からない。モリはゲストハウスに宿を取り、彼女にあてた日記風の手紙を書き始める。ほどなく近くのカフェ「自由が丘」の女主人(ムン・ソリ)と急接近し…。
撮影当日30分で台本暗記
加瀬が初対面のホン監督から出演を打診されたのは2年前、東京都内の映画館でのことだった。「3人のアンヌ」のPRで来日していたホン監督と雑誌の対談で意気投合し、終了後も喫煙室に場所を変え、映画談議に夢中になった。