人間の狂気に斬り込み、その本質に映像で肉薄してきた韓国のキム・ギドク監督(53)がまたもや問題作を手がけ、ファンを驚かせた。新作「メビウス」でモチーフとしたのは、思春期を迎えて間もない少年のペニスだ。ペニスなど性行為や排尿の際に使う単なる道具でしかないのではないか-と捉えがちなわれわれの懐疑的な見方を想定してか、キム監督は開口一番、「家族、ひいては人間が存在する意義を考える道具としても、ペニスは極めて大切なものだと思うんですよ」と機先を制し、したり顔で映画化の意義を強調してみせた。
韓国のとある上流家庭。愛人(イ・ウヌ)との逢瀬にうつつを抜かす夫(チョ・ジェヒョン)に対し、怒りを爆発させた妻(イ・ウヌ、2役)は、寝入っていた夫を襲い、鋭利な刃物でペニスを切り落とそうとするが、激しい抵抗に遭ってあえなく断念。ところが、すぐに攻撃の矛先を自分の息子(ソ・ヨンジュ)に向け、熟睡していた息子のペニスの切断に及んだ。そのまま妻は家を飛び出して行方不明となり、残された息子は排尿や自慰行為すら満足にできない自分に嫌気が差して、すっかり生きる自信を失ってしまう。息子への罪悪感にさいなまれていた父は、ペニスがなくても生きがいが感じられるとっておきの解決策を見つけ出し、息子に伝授するのだが…。