加えて、日本の内閣には官房機密費というものがあり、かつて官房長官や自民党幹事長を務めた野中広務(ひろむ)氏(88)がテレビや講演で公言しているように、その額が年に100億円以上あり、今も存在している。それは現金で保管され、民主党政権時代も含めて、歴代首相と官房長官が好きなように使える。より具体的には内密の調査や謝礼などに使われたりしている。だが、内実は、野党も含めた国会議員の海外「出張」の餞別(せんべつ)や、何かのお祝い事などにも使われ、政治的な「お手盛り」と「なれ合い」で消費されてきた。
メディア報道論からいえば、今回の県議のケースは「社会部」的な事件であり、一方の内閣官房秘密費は政治部の扱いという違いがある。
社会部は現場感覚で事件をとらえるが、政治部は有力政治家と仲良くして、「より大きな」政治動向をつかむという取材法を取る。報道メディアの姿勢に整合性がとれていないことが、社会の浄化の妨げになっているといえる。(同志社大学社会学部教授 渡辺武達(わたなべ・たけさと)/SANKEI EXPRESS)