【メディアと社会】
前回の本欄(2月26日付)で、東日本大震災の鎮魂曲などを“作曲”した佐村河内守(さむらごうち・まもる)氏にゴースト作曲者がいた問題で、それに気づかず、「感動」の物語として伝えたメディアの責任について書いた。今回また、震災を扱ったドキュメンタリー映画で過剰な演出が行われていたことが発覚し、上映中止になるというメディアがらみの不祥事が起きた。
まさに米国のメディア学者、ラルフ・キーズが、情報化時代を「脱真実の時代」と喝破し、著書の副題に記した「現代の不誠実とごまかし」が、日本でも現出しているかのようだ。
映画は、東日本大震災から2カ月後に宮城県南三陸町で開局した災害ラジオ局「FMみなさん」と町民の姿を描いた「ガレキとラジオ」。大手広告会社が企画・製作した。昨年(2013年)4月から全国各地で公開され、自主上映会も開かれている。
震災後、東北では30局以上の臨時FM局が開局したが、そのうちの一つであるFMみなさんは、津波に押し流されて鉄骨だけが残った役場の防災対策庁舎とともに、全国のメディア関係者に注目された。