【メディアと社会】 渡辺武達
サッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会で、日本代表が世界ランクの順位通りの成績で決勝トーナメント進出を果たせず、メディアの報道も本当のサッカー好き向けが中心になり落ち着いてきたと思ったら、今度は7月1日に行われた兵庫県議会の野々村竜太郎(ののむら・りゅうたろう)議員(47)による政務活動費不正流用疑惑に関する“号泣会見”一色となった。
新聞も「お笑い」視点
野々村氏の名は、「号泣県議」として全国にとどろき、世界でも「奇っ怪な日本の議員」として知れ渡るようになった。わずか1週間ほどの短期間で個人名を社会にこれほどまで浸透させた事例は、「広告効果論」素材として最適であり、筆者のゼミでも関連の動画を10分ほど視聴し議論を試みた。
その際、新聞社のニュースサイトにリンクされた動画を使って議論しようとしたのだが、20人ほどの学生がみな、テレビで繰り返し流された「号泣シーン」になる前の弁明の段階から笑い転げてしまい、議論にならず、野々村氏の「一流のコメディアン」以上の才能が示された。
学生たちは、この問題を日本の深刻な政治的病弊とはとらえず、支離滅裂の弁明と号泣を“お笑い”ととらえたわけだが、活字媒体の新聞各紙も、サイトに動画をリンクした事実からも、学生と同じ視点でこの問題を捉えたといえる。