つまり、名目金利から消費者物価上昇率を差し引いて実質金利と見なす。その実質金利動向を見ると、1年定期預金は2013年6月から、10年物国債では13年8月から、実質金利がマイナスになっている。名目金利や利回りがインフレ率を下回る超低金利の預金や短期金融商品で運用するのは、だれでも不利この上ない。そこで、多くの家計は現預金を、企業の大半は手元の余剰資金を消費や設備投資に回す行動に出るはずだ。あるいは、家計や企業のカネは株式や投資信託にも流れ出すかもしれない。
グラフにある通り、民間設備投資は力強さには欠けるが、回復基調にあるのはどうやら間違いない。株価のほうは皮肉なことに、マイナス金利になった昨年(2013年)夏に急落した。実質マイナス金利になっても日本の家計は金融資産の過半を占める現預金を取り崩さないどころか、年間20兆円規模で増やし続けている。株価自体は外国人投資家の買いでその後持ち直したが、今年に入ってから外国人の売りで軟調が続く。マイナス金利が株高につながらないのは、やはり一般投資家の株式市場に対する信頼感が小さいからだろう。多少の株高では、個人投資家は株式の長期保有に踏み出さないし、外国人投資家に引きずられて慌てて売ってはほぞをかむ。