【国際政治経済学入門】
中国の不動産相場の下落が地方にも広がっている。数年も前から機会があるごとに「中国バブルの崩壊」を論じてきた筆者には、知り合いの読者から「今度こそ、本当にオオカミは来るでしょうね」と冷やかされるが、「崩壊し切れないから問題がさらにこじれるのですよ」と答えることにしている。
まず「バブル崩壊」の定義をはっきりさせておこう。単に不動産や株式などの資産相場が暴落する事態を指すと見なすのは不正確である。資産相場が継続的に下落する中で、金融機関が巨額の不良債権を抱え込み、信用不安に発展して、初めて「バブル崩壊」になる。日本の1990年代初め、米国の2008年9月のリーマン・ショックが典型例だ。
では、中国が上記のようなプロセスをたどるだろうか。グラフを見ると、不動産相場はリーマン・ショック後に急激に落ち込んだが、銀行による不動産融資の増加とともに急回復した。その後、不動産投資の過熱を警戒した北京当局は不動産融資圧縮を国有商業銀行に命じたところ、相場は急降下した。そこで一転して13年には融資規制を解除して相場にてこ入れした。すると、相場は再上昇した。