【国際政治経済学入門】
民主党の菅直人(かん・なおと)政権時代の2011年6月、消費税増税案を作成した与謝野馨(よさの・かおる)経済財政担当相(当時)と会ったとき、筆者が「デフレ下での消費税増税は避けるべきではないか」と反対論をぶったとき、与謝野氏の脇にいた官僚氏が傲慢にも口をはさみ、「消費増税すると物価が上がりますからね」とニタッと笑った。そんな経済に無知な官僚が裏で増税案をとりまとめ、メディアを操縦し、政治家たちを篭絡(ろうらく)し、国民の運命を狂わせてきた。
「無知」と言ったのは、「物価上昇=脱デフレ」という短絡的な思考のことである。1930年代のデフレ恐慌時代に「雇用・利子および貨幣の一般理論」を著したJ・M・ケインズはデフレについて、「物価下落が続くという予想が広がっていること」と定義したばかりでなく、「(デフレは)労働と企業にとって貧困化を意味する。したがって、雇用にとっては災厄になる」と考察している。つまり、デフレかどうかは物価と雇用の両面から判定するべきだと説いている。