今回の補選は、徳洲会(とくしゅうかい)グループの選挙違反事件をきっかけとしているため、政府・与党は「政治とカネ」問題に対する世論の風当たりや、消費税増税への反発を懸念していた。
加えて、選挙期間中はTPP交渉をめぐる日米協議の真っ最中だった。鹿児島は牛肉・豚肉の産地である上、選挙区内の奄美群島は農産品重要5分野の一つ、サトウキビの一大産地とあって、政府・与党はTPP協議の補選への影響に神経をとがらせていた。
このため、安倍晋三首相(59)や石破(いしば)幹事長が現地入りし、てこ入れを図ってきた。結局、「政治とカネ」の問題や消費税増税、TPP交渉の影響は限定的だったようで、与党幹部は「有権者は冷静だった」と胸をなで下ろした。
政府・与党は、大型連休明けから集団的自衛権行使容認をめぐる議論を加速させる。政府の有識者懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が5月中旬に報告書を提出した後、首相は今国会中に集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈変更を閣議決定したい意向だ。