職業も生き方も違う女性たちだが、彼女たちが抱く人生への不安や悩みは、誰しもが思い当たる内容だ。「リアリティーはすごく大事にしています。どこかに存在していそうな、読んでドキッとするような内容になったと思います」
6人をつなぐのは、朱肉で汚れた1枚の千円札。愛と性とお金に翻弄される女性の間を、ゆらゆらと旅していく。「お金って人から人へと巡っていくけれど、普段は前の持ち主がどんな人だったかなんて気にしない。でも、たまにメモとかが書いてあるお札があって、気になったりする。お金って日常とは切り離せない存在だし、登場人物たちをつなぐツールとして面白いな、と」
答えは1つじゃない
女性の性をテーマにした「R-18文学賞」大賞を受賞し、デビューした。リアルで、どこかしら切なさを感じさせる官能描写が魅力の一つだ。「女性にとって、性は切り離すことができないもの。生理が来たり、出産や更年期など、自分たちの人生に向こうから勝手に関わってくる。性は生の一部。だからこそ、官能描写だけが浮かないように、自然な流れの中で描くことを心がけています」