【本の話をしよう】
ファミリーコンピューターが発売された当時、私は中学生でした。当然、欲しいと思いました。ですが、両親が購入を許してはくれませんでした。
「ただでさえ勉強しないくせに、ゲーム機なんてあったらどうなることか」
両親の見立ては正しいものでした。テスト前だろうが、明日が高校入試だろうが、意志薄弱な私はきっと誘惑に負け、ファミコンにカセットを差しこみ、時間を忘れてコントローラーのボタンを連打したはずです。
満を持してファミコンが我が家にやってきたのは、私が短大に入学してからのこと。友人の家で『ポートピア連続殺人事件』の迷路場面を、指をくわえて見ているだけだった私は、それ来たとばかりに中古ソフトを買いあさり、友人と貸し借りをするなどして、二度と帰ってこない若かりし日々の九割九分を、ゲームに費やすようになりました。なにしろ、講義が一コマ空いただけで、家に帰ってゲームしていたくらいなのですから、重症です。
以来、30歳に手が届くくらいまでは、寸暇を惜しんでゲームをしていました。本を読むよりもゲームをやっていた時間のほうが、おそらく長いのではないでしょうか。本当に我ながら困ったものです。