【本の話をしよう】
今では、ほぼ見かけませんが、私がまだ幼稚園児くらいだったころは、たまに街中で野良犬に遭遇することがありました。野良犬といっても実態は現在と同じで、迷い犬か捨て犬かのどちらかだったのでしょうが。
5歳のとき、我が家の前の雪山で姉と姉の友達と3人で遊んでいたら、北海道犬ほどの大きさの黒い犬に襲われたことがあります。襲われたというのは、もちろん私の主観。思い返してみれば、犬に攻撃の意思はなかったような気がしますが、幼い子供にとっては、だしぬけに現れた野放しの犬というのは恐ろしいもの。私たちはいっせいに悲鳴を上げ、逃げました。
犬は逃げるものを追いかけるので、当然あとを追われました。姉たちはさっさと我が家の中に避難し、私が玄関に入る前に、ドアに鍵をかけました。私の背後には主観により巨大化した黒犬。家には入れない。姉はドアを開けてくれない…。
私もどうにか近所の家に逃げ込んでことなきを得ましたが(子供の足でも逃げられたということは、やはり犬に攻撃の意思はなかったのでしょう)、「いざというときに、姉妹愛なんてない」という現実を、しかと悟った出来事でした。