【本の話をしよう】
「笑っていいとも!」などの番組を担当する人気放送作家、樋口卓治さん(49)が、2作目となる小説『失敗屋ファーザー』を刊行した。父と娘の愛情物語を縦軸に、ユーモアとアイデアをたっぷり詰め込んだ。
主人公、細野一郎は、高校生の娘・清江と2人で暮らすシングルファーザー。13年前に妻が他界して以来、「失敗屋」として働きながら、男手一つで清江を育ててきた。そんなある日、一郎のもとに弁護士から一通の封筒が届く。「お父さん検定」を受けて合格しなければ、清江の親権を剥奪するというものだった-。
「僕自身も、高校生の娘を持つ父親です。思春期の娘との距離感や付き合い方はとてもデリケート。テーマとしてありだな、と思っていました」。本音をいえなかったり、気持ちのすれ違いでケンカをしてしまったり。どことなくぎこちなさが漂う父と娘の関係を、リアルに描き出した。「感情表現は実体験をベースにしています。実際娘とケンカしたりしますが、それも『取材』(笑)。『あ、ケンカするときは単に泣くだけでなく、怒ったような目をするんだな』とか。家族の協力あっての作品です」