【本の話をしよう】
私は読み狂人。朝から晩まで読んで読んで読みまくった挙げ句、読みに狂いて黄泉の兇刃に倒れたる者。そんな読み狂人がつくづく思うのは、社会の仕組みのなかで、人間という者はほとんどなにも考えないで生きていけるなあ、ということ。
というのは、この読み狂人がそうで、はっきり言って読み狂人、毎日、ほとんどなにも考えないで暮らしている。といってまったくなにも考えない、というのは一種の悟りの境地で、そんな境地には当然、いたっておらず、頭のなかにはなんらかの意識というか、思念というか、そういうものはある。
どういうものかというと、「うわっ。冷蔵庫開けたらシシャモ入ってるやんかいさ。夕方なったら焼いて食たろかしらん」とか、「湯豆腐のタレにいれんのん、柚胡椒ともみじおろしとどっちがええかな。ううむ。わからん。いっそ豆板醤いれたろか」とか、「颱風くる言うよってに雨戸閉めんならんにゃけど、2階の雨戸、建て付け悪いからめんどくさい」とか、「昨日、泥酔して吉田はんの顔舐めてもた。吉田はん、おこってんちゃうかな。わちゃあ」みたいなことで、まア、それを、考え、とは呼ぶことはできない。