■鋭敏な現実感覚と真の勇気
中嶋嶺雄氏には2つの顔があった。現代中国の第一級の研究者として、そして「大学改革」の先駆者としてのそれである。秋田に創設された国際教養大に心血を注ぎ、一昨年2月、道半ばで急逝したときの衝撃は忘れられない。
あれから2年余、氏の著作選集の刊行が始まった。全8巻、まず、第1巻『現代中国像の原点』と第4巻『北京・モスクワ秘史』(3800円+税)ができあがり、『大学教育革命』(第7巻)などが順次出版の運びだ。
編集は氏が教授、学長をつとめた東京外国語大の中嶋ゼミOB有志が当たった。119冊の著作、5千件を超す新聞雑誌への寄稿や対談・座談会など膨大な作品群の目録作成から始め、早期刊行を果たす。教え子たちの結束力には驚かされる。
代表の勝又美智雄国際教養大教授は「収録数は全体の一割にもなりません。後世に残すべきものを厳選し、多くの読者に中国を、国際関係を、さらに教育問題を考えるうえで指針となるよう心がけた」という。最終8巻には、バイオリンや水彩画が得意だった中嶋氏の音楽論、芸術論、人生論などを収め、幅広い人物像を浮き彫りにする。