「欽ちゃん」は、異常にクドい。
それを知ったのは十数年も前、ご本人に、浅草の修業時代についてインタビューをした時のことで、「ぼくのことを十分に知ってほしい」と生い立ちを6時間にわたって語って、まだ浅草の舞台に上がるところまで行かなかった。
このクドさはたまらん、と唖然(あぜん)とした覚えがある。
さすがに70歳を超えて、少しは「薄く」なっているかと思いきや、この本を読む限りまだまだクドさは超人的だ。
たとえば「テレビを見て笑うのは年一回くらい」と言い切る「欽ちゃん」。最近笑ったのは、NHKのEテレで流れた、サルの実験ビデオだったという。もらえるはずの餌がもらえなくてリアクションしてるサルの動きがたまらなくおかしい、とVTRを取り寄せて、若手コメディアン向けの教材にしちゃった、という。
もうこのエピソードだけで、「笑えるものはないか」と目を皿のように捜し求め、いいとなったらトコトン使い切る、「欽ちゃん」のクドさがにじみ出てくる。
だいぶ若いころの話だが、一度、やっている番組をぜんぶやめたらヒマになって、家にいて、毎日、決まった時間に姿を見せるゴキブリの調教に夢中になってた、というのも、まさにクドい性格ゆえ。