京都・二条城近くにあり、洛中で唯一の酒蔵「佐々木酒造」。豊臣秀吉が建てた聚楽第(じゅらくだい)の南端に位置し、千利休が茶の湯で使ったといわれる良質な地下水を使用し、清酒「聚楽第」などを醸造する。4代目の佐々木晃さん(44)は先代の父、勝也さん(80)の背中を見つめながら社長としての研鑽(けんさん)を積んできた。
佐々木酒造は明治26年、創業。古い酒蔵の並ぶ敷地の中に自宅もあり、晃さんは幼い頃から勝也さんが仕事をする姿を見てきた。「仕事でも家庭でも厳しい人でした。3人兄弟で上の兄2人は勉強ができたけど、私は全然ダメで、いつも怒られていました」と晃さん。酒造りをしない時期は、ガラスを割ってしまったり、いたずらがばれたりすると、麹(こうじ)を作る麹室(むろ)に閉じ込められたという。「室の中は真っ暗で、本当に怖かったですよ」
今は「京都の酒を広めたい」と意気込む晃さんだが、20代半ばまで自分が蔵を継ぐとは思っていなかった。
一番上の兄(47)は建築士の道を選んだ。二番目の兄は俳優の佐々木蔵之介さん(46)。蔵之介さんは蔵を継ぐため、大学の農学部で酒米の研究をするなどしていたが、俳優になるため、上京してしまった。