拡大サイズ版発売のきっかけは、高齢読者からの「内容はいいが、字が小さくて目が疲れる」との手紙だった。読者の高齢化について、鈴木局長は「認識はしているが、高齢者向けに作っているわけではない」と強調する。同誌は自らを「リアルで知的好奇心の旺盛なひとたちのための雑誌」と位置づけており、マイナーチェンジは今後も重ねていくものの、編集方針などの基本を変えるつもりはないという。
バランスに苦慮
雑誌購読層の高齢化を直接的に示す統計はないが、出版科学研究所の柴田恭平研究員は「誌面を見る限り、高齢者を意識した特集は明らかに増えており、高齢化傾向は間違いない」と指摘する。
出版不況の中、特に雑誌の落ち込みは深刻だ。最大の問題は、新規読者が育っていないこと。編集者の松田哲夫さん(66)も、雑誌の休刊点数が創刊点数を上回る現状や、“高齢者の性”特集に走る週刊誌などを例に挙げ、「かつて最優先課題だった『読者の若返り』をあきらめつつあるのではないか。今いる読者とともに滅ぶ道を選んでいるとしか思えない」と悲観的だ。
現在の読者をつなぎ止めることは重要だが、新陳代謝がなくてはいずれ存続の危機を迎える。そのバランスをどうするか。変化が少ないように見える総合誌の世界でも、試行錯誤は続きそうだ。