【自作再訪】
日米の技術思想の違い、文化の違い、命に対する考え方。比較文化論みたいな意味が…
日米開戦を前にした日本で昭和15年、世界を圧倒する性能の零式艦上戦闘機(通称・零戦)が誕生した。技術後進国だった日本でなぜ、世界に冠たる戦闘機が開発されたのか、そして零戦の限界はどこにあったのか。設計者の堀越二郎らの苦闘を描いたのがノンフィクション作家、柳田邦男さん(77)の『零式戦闘機』(52年)だ。戦後の技術大国・日本に通じる題材を描いた作品は、刊行から30年以上たった今も増刷が続く“長期飛行”を記録している。(聞き手 溝上健良)
零戦の人気は戦後も根強く、搭乗員だった坂井三郎さんの『大空のサムライ』や小説家、吉村昭さんの『零式戦闘機』などのブームがありました。そんな中、週刊文春の編集長だった半藤一利さん(83)から「技術者を中心に、零戦ができるまでの物語を書いてみないか」とのお話があったのです。その前に手掛けた『マッハの恐怖』のように、専門性の高い分野の話を一般読者にも分かるようにして、人間が技術にどう向き合ってきたかの物語を書けば、現代の記録文学として深みが出るのではないかと考え、引き受けました。