「自宅軟禁、旅行制限、監視、通話停止、インターネット接続禁止。それでもまだわたしたちにできるのは、この狂った祖国の正体をもう一度見すえること」
弾圧に屈しないタフさと、決して揺るがない軸足の確かさ-この一文に限らず、どの発言にも、氏の眼差(まなざ)しが端的に綴(つづ)られる。なお、氏のもっとも広く知られた作品は、北京オリンピックの主要施設「鳥の巣」だろう。だが、五輪についてこう語る。
「政治家がどれだけ長く市民に讃歌を歌えと命じようと、どれほど多くの花火を空に打ち上げ、外国の要人を抱擁しようと、人々の心に紛れもない歓びと祝いの気分を起こすことはできない」
中国で表現活動を続けることの困難さが、切実に理解できる。だが、それ以上に個人の権利と表現の自由を闘ってでも死守しようとする氏の姿勢に圧倒される。だからこそ、その警句は国を超えた普遍性を備えるのだ。(ブックエンド・1575円)
評・新川貴詩(美術評論家)