田牧は述懐する。「深夜営業の飲食業界にはどこでもブラックな部分があって、それを払拭することなんてできない。系列のある店長の場合、営業的にはまずまずなのに、突然、連絡が取れなくなり、そのままフェードアウト。営業目標を一度クリアしても、翌月にはさらに高い目標が設定される。休日が取れず、働きづめの毎日が続いて、ついに心が折れたんだと思う」
立地条件や客層などを総合的に考えれば、田牧がいた居酒屋が赤字に転落するのは自明の理だった。「関東圏の店舗数を増やすことで認知度をアップすることが本社のそもそもの狙いだったのかもしれない。辞めてみて気づいた…」
店長としての200日間は地獄の日々だったが、辞めてみて募ってくる思いは会社への恨みというより、未熟で世間知らずだった自身への忸怩たる思いだという。 「人間的には成長できたし、この業界に対する浅はかな認識しかなかった自分を反省もした。年齢を考えれば、まだやり直せる」。しばらく自分と向き合い再就職を考えるつもりだが、飲食業界への道は考えられないという。=敬称略