営業成績が低迷していると、本社の幹部社員が来店し、24歳の新米店長を厳しく指導した。「営業のやり方が悪いんだ」「接客を工夫しろ」「もっと常連客を作れ」「客と親しくなって売り上げを伸ばせ」…。収益悪化の要因は、店長の資質にあるかのように叱責された。
日曜の午前、常連客が勤める会社のソフトボールの試合に参加したことがあった。居酒屋の店長が勤務前に客のプライベートにつき合う。抵抗はあったが、「営業成績が少しでもよくなれば」と寝る時間を削ってつきあった。しかし、現実は甘くなかった。
客いなくても「営業中」
8月、大型台風が関東に上陸した夜のことだ。当然のように、客はだれ一人、いなかった。聞こえてくるのは雨と風の音だけ。そんな最悪の日に限って、本社の幹部社員が応援に来ていた。