東京メトロ・銀座線の青山一丁目駅(東京都港区)のホームで8月15日、盲導犬を連れた視覚障害者の会社員が線路に転落して死亡する悲惨な事故が起きた。鉄道駅のホームは「欄干のない橋」とも呼ばれ、視覚障害者団体などがホームドアの設置を促してきたが、高いコストや乗り入れ線の車両規格の違いなどから全駅設置に向けた歩みは遅々たるものだ。銀座線は“日本最古の地下鉄”という名誉ある弱点があり導入が遅れていた。銀座線に限らず、東京メトロではすでに4路線で全駅に設置している半面で、東西線と半蔵門線は着工のめどすら立っていない。それぞれの路線が抱える事情とは…
小さなトンネル…狭すぎるホーム
事故のおきた銀座線で、ホームドアが設置されているのは上野駅だけ。導入が遅れている理由について、東京メトロ広報は「銀座線はホームが狭く、ホームドアの設置が難しい」と説明する。
銀座線は、浅草-上野間が昭和2年に開業した日本初の地下鉄だ。当時は現在と比べて、地下鉄のトンネルを掘るのに時間がかかる。できるだけ小さいトンネルにしたため、ホームが狭く、ホームドアを設置しにくい事情があるという。また、当時はホームドアという発想もなかったので、ホーム自体の強度も十分でなく、補強工事も大がかりなものになる。当然、費用もかさむというわけだ。