東武鉄道が1966年の廃止以来、半世紀ぶりに復活予定の蒸気機関車(SL)が埼玉県久喜市の南栗橋車両管区に19日、到着した。
機関車はC11形207号機。検査施設で整備し、来夏から、栃木県の鬼怒川線の下今市-鬼怒川温泉間12キロを年間140日程度走らせる予定。SLの維持には電車と比較にならないほど高いコストを要するが、東武としては東京スカイツリーへの巨額投資が一段落したタイミングで、本業の鉄道ビジネスを強化する。
関東有数の観光地である日光・鬼怒川は、東武にとっての“ドル箱路線”。1950年代後半から60年代前半には、旧国鉄と新型車両を投入し合う熾烈(しれつ)なバトルを繰り広げた。
レジャーの多様化などに伴い、鬼怒川温泉の集客力は右肩下がりが続いている。一方、世界遺産登録を追い風ににぎわいをみせる日光も鉄道需要が伸び悩む。埼玉県内区間の開通で利便性が高まった首都圏中央連絡自動車道を利用して車で訪れる観光客が増えつつあるからだ。
このため、東武では今年度まで3年間の中期経営計画で、「日光・鬼怒川地区などの活力創出」を重要課題に掲げた。日光への客足を鬼怒川にも向かわせると同時に、車ではなく鉄道で訪れてもらうことがSL復活の狙いだ。