開業が最大8年前倒しされる見通しとなっているリニア中央新幹線の名古屋-大阪間のルートについて、JR東海の柘植康英社長は20日の記者会見で、「奈良市付近」を通るルートで作業を進める考えを明らかにした。ルートをめぐっては、京都の政財界から京都を経由するルートにするよう要望が出ていた。一方、大阪での終着駅については、現行の新幹線との乗り継ぎを考慮して新大阪駅を想定していると表明した。
リニア中央新幹線はJR東海が自己資金で平成39年に品川-名古屋間を先行開業。大阪への延伸は、経営体力を回復させた後の47年に着工し、57年に完成させる計画だった。しかし、政府が財政投融資などの資金支援を行う方針を固め、事業は前倒しされる方向だ。
名古屋以西のルートは、国が昭和48年に策定した基本計画で「奈良市付近」を通ると示され、平成23年の整備計画でも同様の内容が盛り込まれた。これに対し、京都の自治体や経済界からは「国際的な観光都市の京都を通すべきだ」などの要望が出され、誘致の動きが強まっていた。
柘植社長は20日に名古屋市の本社で開いた記者会見で、「国の整備計画が基本にあり、これに基づいて作業を進めていくことになる」と述べ、奈良ルートを前提とする考えを明確に示した。関係者によると、京都を経由するとカーブがきつくなり、走行速度が落ちるなどの弊害が出る恐れもあるという。