ようやく今夏に賞与格差は解消されたが、管理ポストの削減で、旧三越の社員が割を食えば、新たな火種を残す可能性もある。現在の厳しい局面で、会社が一つにまとまらなければ、構造改革が遅れるリスクも抱える。
さらに大西社長を悩ませるのが頼みの綱となる旗艦3店の売り上げの落ち込みだ。伊勢丹新宿本店の4~9月期の売上高は前年同期比5.1%減、日本橋本店が4.2%減、銀座店が8.2%減と振るわない。
婦人服や紳士服、宝飾品の落ち込みが大きく、中間層の百貨店離れが鮮明となっている。
この傾向は三越伊勢丹だけでなく、業界全体の問題でもある。ただ、三越伊勢丹は売上高全体で百貨店事業が占める割合が85%と高く、他社よりも厳しい環境にあるのは確かだ。
一方、大丸と松坂屋を運営するJ.フロントリテイリングは松坂屋銀座店跡に森ビル、住友商事と共同で「GINZA SIX」を来年4月に開業する。松坂屋の看板を掛けず、高級ブランドや体験型消費のテナントを誘致する。オフィスも入居させ、建物の収益の大半は賃貸収入が占める。
J.フロントの山本良一社長は「これまで50年間で築き上げた成功体験やビジネスモデルが通用しない局面が増えてきた」と述べており、百貨店事業にこだわらず、不動産事業に活路を見いだそうとしている。