「リニア全線開業で大阪は“東京都大阪区”になりかねない。東京あっての大阪ではなく、世界の中で存在感のある大阪であらねばならない」。日本総研関西経済研究センターの広瀬茂夫所長はこう指摘。関西経済をこれまで牽(けん)引(いん)してきた重工業、家電産業に代わる新たな成長産業の育成を強く訴える。
都市力向上、不可欠
関西経済界も手をこまねいているわけではない。
関西経済同友会は28年度事業計画で「次の成長産業の創出」を重点課題の一つに掲げた。「世界・アジアから注目される医療都市」への変貌を目指し地域にある大学や大学病院の連携、ビッグデータの集中管理などの提言を検討。国際会議やカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致によるインバウンド(訪日外国人)需要の取り込みも課題に据える。しかし、実現には、企業や大学、自治体間の難しい調整が必要だ。
今後は大阪延伸に向けて、途中駅の選定なども大きな問題になるとみられる。政府、JR東海が大阪延伸の前倒しに動いた中、関西が一丸となれるかが、早期全面開業のカギとなりそうだ。