アジア太平洋研究所(大阪市)の試算では、名古屋-大阪のリニア開業が1年遅れるごとに、関西企業は営業利益の2・1%に相当する1489億円を失う。自動車産業が盛んな東海地域との競争に危機感は強かった。
「全線同時開業が難しくても、名古屋に18年も遅れることが絶対にあってはならない」。大阪延伸について「平成28年度の最重要課題」と位置づける関西経済連合会の森詳介会長(関西電力会長)は5月23日の会見でこう強調した。
「東京都大阪区」への懸念
リニア全面開業で期待される最大のメリットは、ヒトの流れが活発化して経済活動が刺激されることだ。
りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は、「首都圏と関西の移動がしやすくなり、訪日外国人に関西の観光資源をセットで売り込みやすい状況が生まれる。高齢社会に対応した先進的な街づくりで特色を打ち出せば、首都圏から人を誘致するきっかけにできる」と語る。
ただリニア全線開業は、関西の存在感を低下させるもろ刃の剣にもなりえる。
都市力が見劣りすれば、リニアが東京や名古屋にヒトやカネを吸い上げるストローになる恐れがあるためだ。